進化するITで貴社の経営を加速する ―

IFRS(国際財務報告基準)入門

IFRS(国際財務報告基準)の入門解説です。

目次

その2 IFRSの特徴

IFRSの特徴はいくつもありますが、日本基準との対比という観点から、今回は「原則主義」、そして次回は「資産・負債アプローチ」について解説します。

原則主義とは?

IFRSは原則主義という考え方に基づいた会計基準です。それでは、原則主義とはどのような考え方なのでしょうか?日本基準の特徴である細則主義と対比して、以下の表にまとめてみました。

原則主義
(プリンシプル・ベース)
細則主義
(ルール・ベース)
基準設定の考え方 原理原則だけを提示して、細かい規則や数値基準は示さないという考え方 会計基準を適用する様々な場面でのルールや基準値等を詳細な規定として提示する考え方
会計基準 IFRS 日本基準・米国基準

細則主義は細かくルールを規定することで、企業間の会計処理の統一が図られ、比較可能性が確保されるというメリットがあります。しかし、基準の網をくぐって実体とは異なる会計処理が行われることがあり、実際に米国においても細則主義の盲点をつく大規模な粉飾事件が過去に発生しています。
そのような点からIFRSでは原則主義の考え方を採用して会計基準を設定しています。もっとも、国際的に統一的な会計のルールを作るという場合に、細則主義によって策定していては、膨大な作業工数が必要となり現実的ではないといえるでしょう。

会計処理方針の選択

原則主義においては、各企業は文字通り基準に示された原理原則に従って会計処理方針を検討します。そして、採用した会計処理方針を開示情報の中で詳細に説明することになります。
この原則主義に従って会計処理の適用を検討する場合に重要なことは、会計処理の適用に際して法的な形式より経済的な実態が重視されるということです。 例えば、取引の形態によって違った会計処理の適用が要求される場合、法律や契約書に規定されている取引の形式より、取引の実際の経済的な実態を優先して取引形態を解釈することになります。

<ブレイク>

日本の会計基準の設定は細則主義によるといわれますが、では基準書に書かれたとおりに機械的に基準を適用すればよいかというと、決してそんなことはありません。 日本の企業の経理担当者は、会計基準の改定が公表される都度、その適用に頭を悩ませ、監査法人の担当会計士と胃の痛くなるような議論を繰り返すことも多々あります。 細則主義の会計基準といわれる日本の基準でも、その適用に関して非常に難しい判断を伴うのに、原則主義の会計基準といわれるIFRSでは、さらに難しい判断を要求されるでしょう。 IFRS導入で先行するEU諸国では、会計方針の選択適用を決める際、同業の企業が集まって協議することがあるようです。今後、日本でもそのような動きが活発化するかもしれません。

(五島伸二 2010年5月21日)

アドバ・コンサルティング株式会社
〒103-0027
東京都中央区日本橋2丁目1-17 丹生ビル2階
web@adva-consulting.jp
TEL 03-6902-0733  FAX 03-6902-0743